腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは先天性、発展性、後天性など何らかの影響で脊柱管が狭小化し馬尾や神経根が慢性的に絞扼された状態をいう。
下肢の疼痛をはじめ、さまざまな下肢症状や会陰部症状を呈する。
症状の代表的特徴として馬尾性間欠跛の出現である。
■問診ポイント
1.症状の起こり方について詳細に聞く。
2.いわゆる跛行が間欠的か否かの確認が重要。
間欠跛行とは安静時無症状で、歩行を開始後10分あるいは20分程度の歩行を続けることにより、しびれや痛みが下肢に出現し歩行を困難にさせる。
しかし物につかまったり、しゃがんだりする腰部屈曲位での短時間の休息で症状が改善、消失し再度歩行が可能になる。
⇒馬尾障害は両側下肢、臀部および会陰部に、神経根障害は片側に症状を発生。
⇒馬尾性(神経性)間欠跛行は、脊柱管の狭窄により馬尾が血流不全となり、下肢の活動が増加する歩行の際に馬尾神経機能が不十分となり間欠跛行が発生すると考えられる。
また総腸骨動脈や大体動脈の血管閉塞などの下肢循環障害により、歩行時の下肢筋群を酸欠状態にして起こる脈管性間
欠跛行もある。
3.乳母車を押すような腰部を前屈した姿勢で歩くと歩行時間は長くなる。
⇒自転車に乗っても症状は出ない(下肢のみのストレスのため)。
4.軽度な慢性腰痛を訴えるが本症の症状ではなく、筋・筋膜由来の腰痛が多く考えられる。
■症状
1.馬尾障害では異常感覚(しびれ・絞扼感・灼熱感)を訴える。
2.神経根障害は下肢や臀部の疼痛を訴える。馬尾障害との混合もある。
3.馬尾障害による膀胱直腸障害によって頻尿、残尿感などや便秘を訴えることも多い。
⇒なかには歩行時に尿意や便意を感じる、陰茎が勃起するなどの症例もある。
■理学所見
1.腰椎の伸展性を示す症例が多くみられる。
2.まったく脊柱所見が認められない場合もある。
3.神経根緊張徴候は椎間板ヘルニアの合併を考慮する。
4.神経学所見は安静時には認められないことがほとんどである。
⇒馬尾障害では、アキレス腱反射が低下していることも少なくないが判断難。
■画像診断
X-ray:椎間関節の変形、椎間孔、椎間板腔の狭小化、椎体のすべりを観察。
M R I:椎間板・脊髄病変や黄色靭帯などの軟部組織の状態を観察できる。
C T:脊柱管の形態を観察するのに最適で、狭窄状態を知るうえで有用。