【問 診】
患者が診察室に入ってくるところから注意深く観察する必要がある。
歩行状態、姿勢、動作をよく見ることで疼痛の程度や出現部位、筋力低下出現の有無が推察できるからである。
また、患者の表情や態度を観察することも重要で、心因性要素の有無を考慮する要素となり得ることがある。
最初に聞き出すことは患者が一番困っていること、つまり主訴を聞き出すことである。
そして、主訴がどの程度のもので、どの部位に、どのような原因によって、いつから始まってどのように経過しているか、を患者の言葉で正確に記載していく。
「どこが、いつから、どのように、どうしたら」が基本となる。病歴を聴取する際には、以下の内容を注意深く的確に行うべきである。
1. 主訴
患者が最も苦しんでいる、悩んでいる症状を患者の言葉で明確に聞く。
2. 関連部位
主訴と関連性のある症状の有無を確認する。また、主訴以外の患者の状態を全体的に把握することも大事である。
3. 発生時期、日時
症状はいつから始まったのかを、できる限り詳細に確認する。(急性・慢性)
4. 症状の部位
患者自身に示してもらう。指で示すのか掌で示すかを観察することで局限症状か否かを確認できる。また触り方により症状の範囲、方向、深さなども推測の助けとなる。
5. 症状の種類
患者の言葉、表現をそのままに。痛みの表現により誘因の推察ができる。
⇒炎症、神経性、筋性、骨性、内臓系、腫瘍性など。
性質:鋭い痛み、鈍痛、ズキズキ、ビリビリ、しびれ、深部、浅部、圧迫感、熱感、冷感、違和感など。
程度:日常生活における量的表現。(例:立っていられない、歩けない など)
6. 症状の原因、誘因
何をしていて症状が起こったのかを詳細に確認する。また、何をすると悪化・軽減するのか。
もし思い出せない、わからない場合は検者から想定できる質問をすることも必要。
動作時以外の安静時、夜間や就寝時に痛みが出現する場合は注意を有する。
7. 症状の経過
症状の発生から現在に至るまでの経過を聴取する。持続的か間欠的か、規則的か不規則的か、悪化しているのか、軽減しているのかを確認する。
特に急性期で増悪している症状は注意深く聴取する必要がある。症状が複数の場合は出現する順序を聞くこと。
8. 過去の経験、治療歴
過去に同様の症状の有無、ある場合はその時期、発症機転、経過を確認。また、検査や治療を受けている場合はその診断と治療内容、その効果を確認する。
患者自身が行う個人的な処置や薬物の使用も同様に確認をする。
9. 社会歴
患者の職業(現在・過去)、趣味、スポーツ歴などから多い姿勢、動作を聴取することで身体的に負荷のかかる部位を解剖学・運動学的に推察が可能となる。精神的な負担も同様である。
また主訴に関連するような喫煙歴やアルコールの摂取量、食生活の内容などわかり得る範囲で聴取するようにする。
10.既往歴
過去における健康状態を確認する。外傷、事故、手術歴に関して、主訴に関連する可能性があるときは事故状況、検査結果、手術法など詳細に聞く。
または最近の健康診断、各種検査の結果も聞くことも大切。必要であれば家族(配偶者)の病歴も聴取する。
つづく