トラックは左回転に走ります。すると左足より右足の方が外側を回ることから、左足がコンパスます。
重心は左荷重、右非荷重になります。
ではロードに出るとどうでしょう。
駅伝やマラソンでは、通常左走行をします。道路は断面でみると、雨天時の水の流れを考慮して中央が高く端に行く
ほど低くなります。
左右の足の設置を考えるとやや左足の方が強く設置します。ここでも重心は左荷重、右非荷重の傾向をとります。
この選手は左重心の状態でバランスを取って、日々の練習から試合までスピードを保持して、トップで競技をしてきました。
そして、1年前頃に階段から落下して、臀部を強打しています。
やや右側から打っているそうなので、右の骨盤は坐骨に後方からの応力がかかり、後下方に回転変位をおこします。
そうすると右足は短くなることから、重心は右側に傾いていることが考えられます。
このことにより関節の可動域、それぞれの筋肉の活動量のバランスが乱れた状態で普段の練習メニューをこなそうとすると、走るという動作に余計な負荷がかかることになります。
趣味で走っているくらいなら大した問題ではないですが、トップで常にレギュラー争いをしているレベルの選手には致命的な問題になります。
そして実際いろいろな弊害が出てきています。
この選手は右股関節の違和感、特に詰まるような感じがしていると話しています。
急激な衝撃により外傷性の加速度損傷を起こしたため、右仙腸関節の噛みこみを起こし股関節はやや内旋位で、足
の振り出しがあまくなり走行時の地面反力の干渉ができず、その代償を股関節に受けてしまっているようです。
また左股関節は主な荷重側だったはずなのに、急激に右荷重に移行したためコンパスの中心が右に移動し、左足の振り回し運動を強要される形になり長年かけて作り上げてきた、競技者としての身体のバランスが壊れ、左足を振り回すことによる歩幅の調整をした結果、関節が離開しゆるんだような感じで走りにくくなっていたのだと思います。
走る時に大きく関与してくる筋肉に腰筋群があります。
中でも注目されているのが大腰筋で、腰椎前面から骨盤内腔を通り大腿骨内側に付くこの筋は、足を前に振り出すのに大変重要な役割をしています。
脚の長さや回転のバランスが不均等になっている状態で、強度の高い運動を行っているために、大腰筋の疲労が激しく、過緊張しているのが歩容やパルペーションなどで確認できます。
これがトレーニング後の下腹部の違和感につながっています。
つづく