1.関節包とポリモダル受容器の存在
関節諸組織のうち、痛みに関与するものの第一は、関節を取り巻く関節包が蒙る損傷が考えられる。
なぜなら、関節包には多くの神経分枝、筋枝および細動脈が並行して進入しているからである。
特に、繊維層と滑膜層の間には神経層が展開しており(MEMO参照)、それらはパチニ小体(動き受容器)、ルフィニ小体(温受容器)、クラウゼ小体(冷受容器)などのレセプターと結んでいる。
また、靭帯にはゴルジマッツオーニ小体(圧受容器)が分布する。
それらの感覚受容器は、過大な刺激により痛覚に転じることになる。
つまり過度な運動による関節内圧の上昇および温度変化により容易に疼痛が発生するわけだ。
最近では動きと温度の双方に反応するポリモダル受容器の存在が明らかにされている。そうした遊離神経終末が関節包内にも届いていることが分ってきた。
さらに、最近の組織学的、電気生理学的研究により、温・冷受容器の痛みの関与については4.5°~10°Cおよび40°~45°Cで痛覚は最大値を示すことが明らかにされている。
MEMO
神経層は毛細血管と網状結合しており、各組織への酸素と栄養補給はすべて毛細血管により行われる。
したがって、血流状態のいかんによって痛みの閾値も左右される。
2. 筋肉痛の内容
しばしば関節痛として表現される筋肉痛は、浮腫性。
虚血性のものである。
筋肉内に代謝産物(発痛物質)が蓄積し、それらが知覚神経を刺激するために痛みが生じることになる。
また、血流量の減少により温度低下を招くことも痛みを引き起こす原因であるとされる。
特に「冷」の場合は、常温よりわずかな低下をみることが痛みに結び付くとのデータも出されている。
MEMO
化学的発痛物質にはヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、プロスタグランジン、カリクレイン、カリジン、プラスミンなどがある。それらの物質が中枢系に投射されると、麻薬様物質(エンドルフィンなど)を誘発することになるとされる。
次に、筋肉を1次的に操作する固有受容器は脊髄系の筋紡錘(1a線維)とゴルキ腱器官(1b線維)である。
前者が筋長の調整に、後者が張力の調整に(時間差を持ちながら)それぞれ機能している。
加えて筋長は錘外筋線維により調整されるほか、遠心性のγ線維によって求心性の1a線維(運動性のα線維)が再修正されるという二重機能を持つ。
このことは、もともと筋肉にとって過剰な緊張には耐えられないという事実を物語っている。
また、過大な収縮速度(小脳関連)とか筋疲労の増大などにより、筋機能の障害を招きやすいことを示してもいよう。
完