2.関節内各組織の対応
上記のように、それぞれの組織がそれぞれ過不足なく機能してるならば、関節は正常な可動域を保ち、痛みなどの発生もなく長期間の使用に耐えられるように作られている。
それでは、どの組織に、どのような障害が生じやすいのか。
1)関節包
関節腔(間隙)を包み、外層はコラーゲン線維の大きな膜で作られ、その内層は濶膜に覆われている。
外層は血流量が小さいので、損傷による回復には時間を要する(「関節の痛みのパターン」の項参照)。
2)滑膜
関節包の内側を覆い、リンパ管・神経が届き、毛細血管網を持つ。
また繊毛、ヒダ、脂肪パットなどを備え、滑液の生成と滑膜の再生を助けている。
MEMO
①オーバー・ヒートの吸収は滑(液)膜であるが、過剰のものは直上の皮膚により放熱される。
したがって、皮膚が正常な厚みを失っていると、放熱効果が働かず、摩擦熱が内部にこもり、関節の異常につながる。
②オーバーユースによる産熱の過剰とは逆に、関節の使用が過少な場合は滑液の産生不能、栄養障害などを引き起こす。分泌性の障害は、神経性のものとは逆に徐々に積み重なるために快復も長引くことになる。
3)滑液
関節腔を満たし、関節面の潤滑と軟骨の栄養補給に働く、粘性(ヒアルロン酸)を持ち、濃度の上昇で粘性を増す(ゲル化)。また、粘性は温度に敏感であり、低温により増大する。
MEMO
寒い季節における関節リウマチなどのこわばり感は、この粘性の増大によるものとされる。また、その不快感は滑膜に届く自律神経の影響によるものと言われている。
4)関節軟骨
軟骨は弾性を持ち動作が引き起こす圧迫の状態により、その厚さが増減する(弾性反跳)。
これは、動きを円滑化するためと、もう1つは成人の軟骨が神経・血管を欠いているため、その弾性により栄養物、老廃物の出し入れを行うためである。
仮に、硝子軟骨に痛みを感じるとすれば靭帯の捻挫などを疑う。
なお、骨自体は痛みに敏感ではないが、炎症が骨膜に及ぶと鋭い痛みが走る。
MEMO
関節軟骨の細胞外成分を軟骨基質といい、水分のほかコラーゲン線維、無定形物質(プロテオグリカン)から成る。軟骨細胞は、後者の物質を合成する機能を持っている。
5)靭帯
2つの骨は靭帯により結合され、関節の過度の運動を抑制し、その損傷を防ぐことに働く。
ほかに、関節包を補強するために包内に靭帯を持つものもある。
いずれにせよ、靭帯はセンサリー、レセプターを備えるが、触診により痛みを覚えることはない。
なお、滑液ヒダは関節端の不適合部分を埋め、かつ滑液の流入を助けている。
つづく