鶴ヶ島 カイロプラクティックセンター
院長 船戸 孝俊B.S.C.
次に食生活を考察してみましょう。
この患者はしっかりと離乳が出来ていないことに、大きな問題を抱えています。哺乳動物は、離乳をすると乳糖を分解できなくなります。よく牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人が少なくありません。このような人は「乳頭不耐症」などと言われます。
病気のように思われがちですが、けして病気ではありません。
哺乳動物として正常に成長し離乳している証です。人乳にも乳糖は含まれていて、グルコースとガラクトースからなる二糖類で、ラクターゼ(乳頭分解酵素)によってグルコースとガラクトースに分解されます。
このラクターゼは乳児期には分泌されますが、離乳期以後は分泌されなくなります。
この特徴は哺乳動物に共通のもので、日本人を含むアジア人、アフリカ人なども同じように推移します。ラクターゼが分泌されなくなると、腸管が刺激され下痢などの症状を引き起こします。ましてや牛乳のような異種の乳が人体に合うのかも疑問ではあります。
しかし、しばしば離乳期を過ぎてもラクターゼを分泌し続ける人々もいます。
ヨーロッパ人です。
哺乳動物の中でも珍しいその形質は、寒冷地で農作物が育たなく、家畜から採れる乳類を利用しなければならない環境の中その地域で暮らすために突然変異をし、次第にその数を増やし多数派になっていったものと思われます。
ヨーロッパ人の多くが乳糖を分解できるようになるのに約6000年以上もかかっているのです。
一般的な栄養指導では、牛乳はバランス栄養食でカルシウムの摂取には適しており、高タンパクで成長期の子供には欠かせないとされています。
例えば日本人の一日のカルシウムの摂取量は600mgとなっています。
欧米では1000mg摂っているのに比べれば、確かに少なく見えます。
しかし少し視点を変えてアジア人やアフリカ人を見てみると、せいぜい一日400mg程度しか摂っていません。
日本人の摂取量が格別少ないわけではないのです。
しかも離乳が成立した後では、乳類からのカルシウムを吸収出来なく、逆に他の食物から摂取したカルシウムも含めて、カルシウムの排泄が促進されるという事実もわかってきました。
牛乳を飲むことで、カルシウムの摂取量は確かに増えるのですが、排泄量がさらに上回ってしまうのです。
つづく