2.腰椎骨盤部の分析
腰椎骨盤部の矯正に際し考慮するべきことは、同部位の構造及び生体力学的分析である。二足動物であるヒトは重力に抗して直立位、座位での生活が強いられるが、その姿位を維持するためには腰部筋群の発達が不可欠である。
従って、ヒトは、日常生活において常に腰部筋群にストレスを受けていると考えられ、腰部筋不均衡に起因する骨格異常を考慮しなくてはならない。
人が直立位をとるためには脊柱起立筋、大腰筋の働きが必要であるが、それらの構造的観点から特に大腰筋に着目するべきである。
大腰筋の起始部は第12胸椎及び全腰椎、停止部は大腿骨小転子であり、その作用は股関節屈曲のみならず、腰椎前彎を維持しヒトの直立姿勢を維持する重要なものである。
つまり、ヒトの直立歩行には不可欠な筋である。
また、筋の走行(起始・停止)からみると、大腰筋の左右不均衡は、筋緊張反対側を凸とする腰椎機能的側彎に起因し、両側性緊張では腰椎過剰前彎と関連することが考えられる。
従って、大腰筋不均衡の検査及び必要な調整は、腰椎骨盤矯正前に行われるべきである。
さらに、体幹の側屈に作用する代表的な筋は腰方形筋である。
その起始部は第12肋骨及び全腰椎、停止部は腸骨稜であり、その走行から、左右不均衡により腰椎機能的側彎がおこることは明らかである。
従って、腰方形筋不均衡もまた腰椎骨盤矯正前に検査され、必要に応じ調整されるべきである。(大腰筋、腰方形筋の検査法は症状別カイロプラクティックハンドブック参照)
最初の触診時と比較すると大きな改善が得られているケースが少なくない。つまり、腰部筋群不均衡に起因する骨格異常を取り除くことで真の骨格異常を見出すことができるということである。
次に腰椎骨盤部サブラクセーションの検出について述べる。
まず仙腸関節サブラクセーションを調べるが、その検査にはディアフィールドレッグチェックを用いる。
同検査では、仙腸関節において腸骨の異常なのかあるいは仙骨の異常なのかということを調べる。また、Activator Methods(AM)ストレステスト・プレッシャーテストでそのサブラクセーションの存在を確認すると良い。
リスティングは、短下肢側PI腸骨あるいは短下肢側AI仙骨が存在することになる。その際考慮すべきことは骨盤異常による腰椎の補正作用である。
それは、仙骨がAI変位すると第5腰椎は仙骨AIの同側に後方回旋変位をおこす傾向があり、それにより腰椎~仙骨の機能的側彎を形成することになる。
PI腸骨サブラクセーションにおいても仙腸関節構造により仙骨にAI変位がおこる傾向があり、第5腰椎もまた同様に補正がられることが多い。
短下肢反対側腸骨はASサブラクセーションをおこす可能性がいわれているが、それは腰椎生理的彎曲と関連すると思われる。腰椎前彎が強い場合は骨盤の前傾が増し、短下肢反対側AS腸骨をおこしやすくなる。
また、腰椎前彎が減少している場合は骨盤の前傾も減少し、重心が後方よりになるためAS腸骨サブラクセーションはおこり難くなる。短下肢反対側AS腸骨の検査は、触診、モーションパルペーション、AMストレステスト・プレッシャーテストを行うことを薦める。
このように構造的、生体力学的理論に沿って検査、矯正を進めることで患者の身体の変化を診ながらの安心且つ安全
な治療が可能となるであろう。