1.機能的短下肢とその原因
カイロプラクティックでは、様々なテクニックにおいて脚長分析(左右脚長差をみる)を行い治療を進めて行くが、その信頼度はそれほど高いものではない。
ヨーロッパでのVennらの脚長分析についての比較実験において、結果の験者間再現性は低いと報告された。
Hestoekらは、その脚長分析結果の不一致は検査方法に統一性がないことが原因であると述べている。
これらを考慮すると、検査方法に統一性を持つアクティベーターメソッド(AM)脚長分析が最も信頼度が高いと考え、私はその検査法を使用している。
AM脚長分析(短下肢決定)は次の通りである。
①視診においてかかとの内反の大きい側に機能的短下肢が存在する傾向にある。
②示指と中指で外果を挟むように置き、母指を足底部の踵に置く。次に足関節の内反を取り除き、軽い頭方圧を加える。この時にみられる短下肢が機能的短下肢である。
機能的短下肢の原因は仙腸関節サブラクセーションに起因するものが多いといわれており、脚長差を診て直ぐにディアフィールドに相当する仙腸関節の矯正を行う治療家が少なくない。
しかし、機能的短下肢の定義は「仙腸関節など荷重関節の異常により起こる下肢後部筋群の収縮に起因する短下肢」であり、必ずしも仙腸関節サブラクセーションに起因するわけではない。
テクニック別にみてみると、トンプソンテクニックにおける頸椎症候の検査及び矯正はその一例である。つまり、頸椎または
後頭骨サブラクセーションが機能的短下肢に起因する可能性があるということである。
また、臨床的には、股関節サブラクセーションが機能的短下肢に起因し、ディアフィールドレッグチェックの際、誤った骨盤リスティングを検出してしまうことがある。
股関節サブラクセーションはその同側に機能的短下肢をつくってしまい、股関節矯正後に短下肢が左右逆転することもある。従って、頸椎症候に加え、股関節検査もまた骨盤リスティングを決定する前に要チェック部位であると思われる。股関節検査はAMプレッシャーテスト・ストレステストを使用すると良い。
仙腸関節に起因する機能的短下肢決定までの手順を下記に示す。
①脚長分析:短下肢を診る(前述AM脚長分析参照)
②頸椎症候の検査及び必要な矯正(トンプソンテクニックテキスト参照)
③股関節の検査及び必要な矯正(アクティベーターテキスト参照)
④脚長分析:ディアフィールドレッグチェックにより骨盤リスティングの決定(トンプソンテクニックテキスト参照)
つづく