急性腰痛
急性腰痛とは、3か月以内に生じた腰痛や腰椎に関与する下肢への症状が出現することで日常の活動に困難をきたす状態を言い、さまざまな原因がある。
いわゆる"ぎっくり腰""腰椎捻挫"である。
■問診ポイント
骨折や腫瘍、ヘルニアなどの重篤な疾患の存在を判別することが重要。
1.発症の機転と症状出現以前の腰部の状態を詳細に聞く。
⇒日常での何気ない動作やスポーツが誘因となることが多く、ほとんどが筋骨格系問題であるが、誘因がなく強い腰痛が出現した場合は腫瘍や尿路結石などの他疾患も疑う必要性がある。
2.症状の経過より炎症の有無と進行状態を推察。
3.下肢症状の有無を確認。
4.過去の経験、治療歴とその効果。
5.重度の外傷の有無を確認。高齢の女性の場合は骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折も考えられる。
6.既往歴、家族歴、食生活、薬物、喫煙や原因不明の体重減少などから腫瘍の存在を考慮。
■症状
脊椎所見
疼痛のため直立位がとれずに前屈位になってることが多い。
座骨神経痛を伴うと膝屈曲位になることもある。椎間板、椎間関節の炎症により生理的弯曲の減少も少なくない。
疼痛のため機能的側弯が生じることもある(※ただし、構造的側弯と鑑別する)。
これは座位、臥位や疼痛の軽減で改善する。
安静時痛と痛みの時期
炎症の存在は安静時も疼痛が出現させる運動器系が原因の場合はさらに運動的負荷により疼痛は増強する。
運動に関与しない疼痛憎悪の場合には腫瘍や内科的疾患を疑う。咳やくしゃみで疼痛や下肢への放散痛が出現するなら椎間板ヘルニア、馬尾腫瘍を疑う。
⇒食事、排便に疼痛が関与するなら消化器系疾患を、月経時に疼痛憎悪するようなら婦人科系疾患を考慮。
安静時の原因となる代表的な疾患
炎症~急性期
腫瘍~病的骨折
椎間板ヘルニア 変形性脊椎症 腰椎すべり症~神経根炎による
隣接臓器疾患~腫瘍による神経根圧迫
尿道結石~急性腹症
■理学所見
1.可動検査での運動制限の有無と誘発される疼痛を確認。
2.棘突起の叩打痛の有無、筋緊張の有無を確認。(特に脊柱起立筋群)
3.筋骨格系症状と神経・脊髄症状との鑑別検査。
4.下肢症状出現時は神経学検査が必要。
日常生活へのアドバイス
急性腰痛の患者は、痛みの限度内で日常生活を続けることで臥床でいるよりも早い回復をもたらす。
重いものを持つ、長時間の同姿勢、腰を捻る動作などは、脊柱に力学的負荷を与えるため制限が必要である。
また発症2週間以内に有酸素運動を開始することで機能回復を助ける。
■画像診断
器質的疾患の可能性があれば、X-ray、MRI、CTなどの画像診断を進める。
腰椎の前・後弯の有無、すべりなど変位の確認。
椎体、椎間板腔、椎間関節や仙腸関節、股関節の変化、分離や骨折の有無を確認。