JCDC札幌校 学院長 川人誠司B.S.C.[2012.5.26の続き]
【慢性腰痛】
慢性腰痛とは、一般に3か月以上持続する腰痛と定義されている。
急性腰痛から慢性腰痛に移行することは比較的少ない。
器質的疾患を有する場合以外にも心理的・社会的要因が関与していることも多く、治療に難渋することがある。
今日の慢性腰痛患者の整形外科外来、約7割が原因不明ともいわれている。
■問診ポイント
1.一般的基本問診「いつから、どこが、どのように、どうすると」。
2.特に日常生活、仕事での腰椎・骨盤部への負担を推察。(趣味、スポーツなども)
⇒どの脊椎レベルに、どの関節・筋肉にストレスを受けているのかを知る、考えることが重要。
3.事故、外傷の有無を確認。
4.器質的問題の確認:神経・筋・骨格系問題や関連部位からの問題を推察。
5.一般的な身体症状:食欲、睡眠、社会、家族歴、精神状態などから器質的疾患以外を推察。
6.治療歴とその結果。
⇒多数のクリニックを受診している場合は心因性腰痛が疑われるが、患者自身が今まで適切な診断や治療を受けていないと自覚していることもある。愁訴に対しては共感を持ち、適切な態度で接し、信頼関係を築くことが重要であり、治療の第一歩となる。
■症状
一般的に広範囲に訴える鈍痛、張り感、不快感、違和感が多く、筋・筋膜性問題が考慮できる。
逆にポイント的な圧痛は関節性問題が誘因になることが多い。
時として、内臓系からの関連痛として出現することもまれではない。
■理学所見
1.視診:前・後・側面からのバランス、各ラインをチェック。
⇒腰椎を始め脊椎の生理的弯曲の状態、側弯の有無を確認。
2.触診:体幹筋や殿筋群・下肢筋群を触診し、緊張状態、圧痛点を確認。
3.可動検査:自動・他動・抵抗
⇒体幹、殿部(股関節)と比較しながら筋性か否かを診る。
4.器質的疾患以外が考慮される場合は、バーン・テストまたはフーバー・テストで確認する。(詐病検査)
■治療のポイント
1.患者とよい信頼関係を築くこと。苦痛や訴えには必ず耳を傾ける。
2.患者の気持ちを"治してもらう"から"治していこう"になるように指導する。
⇒過大評価や過大な期待を持たせるのは好ましくない。
3.日常生活のリズムの改善と保持。(睡眠、食事、運動)
器質的疾患がない患者は痛みの描写として、解剖学的ではなく、誇張されているような表現をし、限局的ではない特徴がある。
また痛みの形容は感情的であり、程度も過剰飯能を示す。
筋力低下やしびれを有していても筋・皮膚髄節には一致せずに、下肢全体を示す。
■画像診断
器質的疾患の可能性があれば、X-ray、MRI、CTなどの画像診断を進める。
特にX-rayでの椎骨間不安定性の確認は必要。
しかし画像診断所見から症候性か無症候性かの診断はできない。
次回に続く