手技療法家のための 整形外科学 整形学検査法 (5)|健康コラム|日本カイロプラクティックドクター専門学院

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健康コラム

手技療法家のための 整形外科学 整形学検査法 (5)

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カイロプラクティック振興事業協同組合 理事
JCDC札幌校 学院長
川人 誠司B.S.C.

 

肩関節の代表的な疾患

◇肩関節周囲炎

1.肩峰下滑液包炎
原因
・多くは肩関節挙上動作の反復により炎症が起因すると 考えられている。
⇨肩峰下滑液包は肩峰、烏口肩峰靭帯と腱板(棘上筋) の間に存在し大結節の滑らかな運動に寄与。
症状
・肩峰下滑液包における腫張・疼痛・水種。運動制限。 時に熱感。
・60歳代が最も多い。40歳くらいから多くみられる。
・臨床上、大結節部周辺に圧痛がある。雑音も触知。
⇨棘上筋症候群ともいわれる。棘状筋の場合は肩関節 内転最大可動域時に痛みが出現する。

2.腱板炎
原因
・炎症が肩峰下滑液包のみならず、腱板にも波及した状態。
・腱板筋群の過度の使用、または退行変性によって生ずることがある。
⇨変性した腱内に石灰沈着を起こすこともある。
症状
・肩関節痛により運動制限。疼痛除去により可動域改善。 五十肩の範疇に含まれるが、痛みがなくなると可動制 限が消失する点で大きく異なる。
・50歳代に最も多く比較的若年者にも多い。
・ほとんどが腱板の退行変性と考えられており、拘縮肩 に移行するといわゆる五十肩になる。

3.いわゆる四十肩・五十肩(癒着性肩関節包炎・有痛 性肩関節拘縮・凍結肩)
概念
・40歳代以降に好発し、肩関節部の疼痛と運動制限をきたす症候群として考えられる。
・肩峰下滑液包の炎症・変性・長頭腱の変化など考え 方があるが、明らかな原因はない。
症状
・中年以降にみられる疼痛と拘縮を主徴とする疾患。
・徐々に発病し肩甲部の疼痛と運動制限をきたす。痛み は寒冷時、夜間に増強。
・自動運動、他動運動(他動でも制限されるのが特徴) もあらゆる方向に制限される。
・中年以降にも生ずる肩関節痛および拘縮。疼痛軽減し ても拘縮が存在。
・夜間痛強く、時に頚部、上肢へ放散する。圧痛は急 性期前方に、慢性期は後方に多い。
・50歳代が最も多い。全体的には40~60歳までの間に 発症。
⇨男女、左右には差がない。

四十肩・五十肩
①明らかな原因不明のまま、肩甲部に徐々に痛みが出現。 (発症期)
②約6~9 ヵ月で疼痛と運動制限ピーク。(疼痛期)
⇨運動時痛→安静時痛→運動制限
③安静時・運動時痛が減少し拘縮がメインに(拘縮期)②の疼痛が減少し始めてから約12か月日ころまで
④約12~18か月で自然治癒する。(回復期)
⇨拘縮が徐々に改善し、疼痛や違和感・不快感が減少してくる。

4.石灰沈着性腱板炎
概念
・軽度の外傷が起因となることもあるが原因は不明。
⇨ 石灰が肩関節腱板内、滑液包内に沈着し、炎症・機 能障害(外旋制限)・インピンジメントを起こす。
症状
・中年女性に好発。急性に発症し、夜間痛多い。激痛と可動制限を主徴。
・50歳代が最も多い。全体的には40~60歳までの間に 発症。
・X-rayにて石灰沈着の確認。比較的限局した痛み。
⇨ X-rayで石灰を認めても無症状のケースもある。
・臨床上、石灰(沈着物)の大きさと疼痛や可動範囲 は比例しない。
・沈着物の拡散の促進を中心とする保存療法優先し、改善が見られなければ手術的療法を勧める。

 

◇腱板損傷
原因
・腱板の変性が始まり、肩への負担が大きくなる年代に 多発。外傷による若年者にも多い。
・受傷機転は肩関節に対する直接外力、肘や手を付い て転倒するなどの介達外力、牽引・回旋外力。
⇨ 受傷時、顕著な疼痛を生じることが多いが、高齢者 の場合は疼痛もなく、ある日突然の挙上制限を訴えることもある。
⇨ 完全断裂の方が不全断裂よりも年齢層が高い。
症状
・腱板の変性が始まる40~50歳代に多発。男性に多く 左右別では右側に多い。
・臨床症状としては機能障害、疼痛である。雑音の触知も。
・圧痛は大結節部周辺に多く腱板付着部に雑音多い。
・最も損傷を受けやすい腱は棘上筋である。

 

◇肩峰下インピンジメント症候群
原因
・肩関節外転によって、腱板と肩峰下滑液包は烏口肩 峰靭帯、肩峰、上腕骨頭との間で挟撃される。
⇨60~120度の範囲で起因が多い。
・この運動が長年繰り返されることによって肩関節痛が 発生する。
・棘上筋、肩峰下滑液包の慢性炎症が多く、夜間に増 強する疼痛。
⇨上腕二頭筋長頭腱問題の関与も少なくない。
症状
・患者の肩甲骨を固定し患肢を軽度内旋位のまま肩峰に 上腕骨頭を圧迫するよう他動挙上させると疼痛が再現 (インピンジメント・テスト)。
⇨基本的に可動域は保たれている。

 

◇上腕二頭筋長頭腱の疾患
上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を滑動し変性を起こしやすい。腱鞘の慢性炎症の合併や溝に骨棘形成。
1.上腕二頭筋長頭腱腱炎
原因
・上腕二頭筋の過使用により発生。
症状
・肩関節前面の疼痛を主とする。女性に多い。
・結節間溝での圧痛。可動域制限はほとんどみられない。
⇨外傷の度合いによっては筋腹部にも圧痛が存在するこ ともある。
・上肢側挙、肘関節屈曲時や腕下垂、外旋時の際肩関 節痛。 筋を伸張させる肩関節伸展時にも痛みが出現。
・20歳代と40歳代に多い。
⇨上肢の上旋や肘屈曲位での前腕回外で痛みが増強する。

2.上腕二頭筋長頭腱断裂
原因
・重量物をぶら下げるなどの牽引外力によるものが多い。
・50~60歳代に多く、腱の変性を基盤とし外傷が加わることにより発症。
症状
・受傷時、上肢の脱力感、肩関節に雑音を訴えることが 多い。筋腹の下降により陥凹。
⇨肘関節屈曲は上腕二等頭短頭、上腕筋、腕橈骨筋 によって可能。
・屈曲時の筋腹の隆起は正常より遠位にある。

3.上腕二頭筋長頭腱脱臼
・結節間溝横靭帯の断裂により、長頭腱が小結節を乗 り越えて、前方に脱臼するものである。
・単独発生はまれ、腱板前方断裂の際合併し生じる。(こ の際長頭腱脱臼特有の症状はない)
・手術での固定以外方法はない。

 

◇肩関節の不安定症
外傷性肩関節脱臼
・一般的に肩関節脱臼は肩甲上腕関節から上腕骨頭が 脱臼することを意味する。
・脱臼した上腕骨頭の位置により前方、後方に分ける。

[前方脱臼]
原因
・発症機転は強い肩外転と外旋力が同時に働くことによ り起こる。
・頻度が高く約90%の脱臼を占める。
⇨外傷が強ければ肩甲骨関節窩前縁骨折を伴い、前方に脱臼する。
⇨回旋筋群、特に棘状筋、および関節唇に損傷の可能 性。重度は骨頭骨折を生じる。
症状
・患者は健側の手で患側上肢を支えて来院する。 肩峰の突出が異常にみられる。
・外傷後の時間経過に伴って腫脹、皮下出血が現れる。
・肩関節自動運動は不能。他動運動では疼痛と抵抗が ある。
⇨合併症として骨折と神経損傷を伴うことを考慮する必 要あり。

[後方脱臼]
原因
・前方脱臼に比べてはるかにまれである。
・上肢を内旋、外転位にしての強い外傷時に起因する。
症状
・烏口突起の突出が目立ち、前方脱臼に比べて上腕骨 頭は触れにくい。
・自動運動は不能である。

[反復性肩関節脱臼]
原因
・脱臼を経験することにより臼蓋上腕靭帯や関節包の制 動効果が減弱するために、容易に脱臼、亜脱臼を繰り返し起こすようになる。
・肩関節は反復脱臼が最も頻発する関節である。
症状
・若い年齢層に多く、男女比4:1。全身的な関節弛緩症 の場合もある。
・10歳代で外傷性脱臼の90%、20歳代で80%、30歳 代で50%が反復性脱臼に。
・70%異常が2年以内に再脱臼を経験する。
⇨予防として筋力増強訓練が効果的。