カイロプラクティック振興事業協同組合 理事
JCDC札幌校 学院長
川人 誠司B.S.C.
先天性筋性斜頚
頭部が斜めに傾き、同時に反対側に回旋している変 形の総称である。最も多いのは胸鎖乳突筋の拘縮による 筋性斜頚である。先天性股関節脱臼、先天性内反足と 並ぶ整形外科における三大奇形の一つである。分娩外 傷説、炎症説、子宮内強制位説、遺伝説などがあるが 確証に乏しい。
■問診ポイント
1.誘引の有無、頚椎への外傷の有無。
2.出生時の体重・体位などの状態から外傷が加わった可能性を推察。
3.外傷性、炎症性斜頚の場合は頚部痛を伴うことが多く鑑別のために疼痛の有無を確認する。
4.先天性斜頚の場合、他部位の奇形の有無を確認。
⇒斜頚に伴い先天性股関節脱臼を認めることが多い。
■症状
一側性の胸鎖乳突筋に腫瘤の存在を認め、頭部を患 側へ側屈、顔面を健側へ向け回旋している(側屈回旋 位)。矯正方向に顔を向けると患側の胸鎖乳突筋は緊張 するので、判断は容易である。
■理学所見
1.脊椎可動検査において、運動制限の有無、疼痛の有 無を確認。
2.筋性斜頚では、患側の回旋制限、健側への側屈制限を認める。
3.外傷性、炎症性斜頚の場合は、運動に伴う痛みの増強が特徴的である。
4.筋性斜頚は患側の胸鎖乳突筋の腫瘤、索状物が触れられるため有無の確認をする。
⇒軽度の側屈位で触知されやすい。
5.重度の神経学的以上の存在がする場合は、深部腱反射と四肢の動きの観察が重要。
⇒小児では正確な神経学的検査の評価は困難。
■画像診断
X-ray:上位頚椎の奇形などの評価に役立つ。
MRI :斜頚に対する評価は低い。脊髄と周辺組織の相互評価には有用。
C T :X-rayで評価困難の場合に撮影する。環軸関節回旋固定位の評価に有用。
■筋斜頚の治療計画
[生後6 ヵ月未満まで]
1.自然治癒することを母親に述べ安心させる。
2.日常での注意。
3.視診での斜頚位の程度、回旋位の左右差をチェック(定期的な経過観察)。
[6 ヵ月以降]
1.手術。(改善が認められない場合)
2.手術が必要でない場合は経過観察する。
⇒しかし5歳以前には手術が必要(顔面の非対称が改善しない)。
予後はよい疾患であることを理解する。 あやすときは反対側から。(症状側から) TVなどをつけるときも反対側から。 伏臥位は嫌がらない範囲で反対を向かせる。
■病理
生後1週間で胸鎖乳突筋に腫瘤発生し2~4週間で最 大になる(小指大~母指大)。その後、拡大は停止、以 下軟化、縮小し始め自然治癒の傾向を示す。しかし一部 は索状化し筋斜頚を生じる。本症の90%は自然治癒を示 す。先天性に筋性、骨性(上部頚椎の奇形)、後天性に は神経性、炎症性、外傷性(脱臼骨折)突発性などがある。