■ 労働時間の把握と賃金
労働時間の把握は、直接賃金の支払いにもかか わる重要な問題です。他にも、過重労働は健康面 について深刻な影響を及ぼしますので、その点も 注意が必要です。
調査結果の項目を順番に見ていくと、まず準備や片付けの時間については、やや微妙なところですが、準備や片付けを指示しているなら労働時間としてカウントすべきです。また指示していなく ても、業務の延長として当然すべき部分であれば 労働時間となります。
よく、準備や後片付けは自主的にやるものだと いう意見もあります。私もその意見には賛成する 部分もあるのですが、これは当事者同士の理解の 問題ともいえます。つまり、どこまでが業務なの かを事前に明らかにしておくことが必要で、これ をせずに「準備は労働時間じゃ無い」と言っても 理解してもらえないでしょう。これは、採用の時 点で説明して理解を得ることがいいと思います。 ただし、それでも準備や後片付けが長時間にわ たったり、業務との境界線が無かったりなど行き 過ぎると、「労働時間ではない」とは言いにくい のでバランスが肝心です。
休憩時間については、法律では1日の労働時間 が6時間を超えるときは45分、8時間を超えると きは60分の休憩を、就業時間の途中に与えること になっています。予めこれらの労働時間を超える ことがわかっているときは、必ず休憩を与えてく ださい。また、残業等で所定時間を超えることが わかった場合も、その時点で休憩を挟むように調整をするようにしてください。
また、規定通り休憩ができなかった場合(たと えば60分のところを40分しか休憩できなかった) はその分賃金の支払いが必要なので注意してください。
労働時間の管理については、タイムカードや手 書きの出勤簿などでもかまいませんが、日々の労 働時間について記録するだけでなく、労働者と確 認を取っておくことが有用です。そうすれば後日 トラブルになることもありません。とくに上でも 述べた休憩が規定時間とれなかった場合とか、残 業については、承認制にしておくといいでしょう。
タイムカードで管理している場合でも、終業後ダラダラと残っていて打刻したのか、本当に仕事が そこまでかかったのかはわかりません。しかし、 監督署や裁判などではタイムカードの記録しか無 ければそこまで労働していたと判断されます。手間のかかる作業ですが、後々のトラブルを防止するためにはしておいて損はないでしょう。
シフトや業務内容について、最初に述べた労働 条件の明示で約束した内容を守ることが原則で す。したがって、これから外れる部分については、 予め合意をとった上でしてもらうのが原則です。
業務内容については、労働条件を明示する際に、 ある程度広い範囲を示して、してもらう可能性が ある業務については予め説明しておくといいで しょう。説明した旨の書面を作成してサインをも らっておくと、よりよいでしょう。
シフトについても、採用時一旦は「週4日」とか、「月、火、木」などの取り決めをすると思います。 したがって、これ以外の日に働いてもらう約束は無いのですから、勝手にシフトを入れることはト ラブルのもとです。逆に、シフトが入るはずの日に入れないことも、当然約束違反です。そして、 治療院側の都合でシフトを削った場合は休業補償をしないといけませんので、その点も注意してください。
シフトについては、アルバイトを都合のいい駒 としてシフトの穴埋めに使うという意識が問題と なっているようです。アルバイトで働いてくれる 方にも、皆さんそれぞれの事情がありますから、予定外のシフトを勝手に組まないことはもちろんのこと、「こちらの都合で働くのが当たり前」な どという考えを持たないことが必要でしょう。
■ まとめ
ブラック企業に対しては、労働局も専門の部署 を設置するなどして対策しています。ブラックバ イトについても、今後は学生に対しての労働法の 啓蒙活動など行い、対策が進むようです。これま で、社会に出るまで、いや出たとしても労働法に ついて教育を受ける機会というのはありませんで した。今後は、このようなブラック○○に対抗す るために、労働者もいっそう知識をつけてくると 思いますので、よい事業経営を行うためにも、事 業主もきちんとした知識を身につけて、適切な対 応を心がけなければいけないと思います。