退職でトラブルに ならないために 第21回 (1)
たや社会保険労務士事務所 田谷 智広
■ はじめに
従業員とのトラブルはどんなときでも起こる可 能性がありますが、退職時は特にトラブルが発生 しやすいタイミングと言っても過言ではありません。すべてが円満退職であればいいのですが、実 際はいろいろな問題があって退職するということ も少なくありません。そういった問題ありの退職の場合がトラブルにつながりやすいといえます。
今回は、どうしたらトラブル無く「退職」を乗り切ることができるか、事例をふまえて説明していきます。
■ 日頃のうっぷん爆発
退職時に、日頃のうっぷんが爆発してトラブル に発展することがあります。いや、正確には、日 頃のうっぷんが溜まって退職するため、最後に爆 発するのでしょう。
たとえば、「パワハラ」「いじめ」などの人間関係の問題 、「休みがとれな 」、「残業が払われていない」など労働条件も問題など、こういったことは不満として蓄積されます。ところが、こう いった不満は在籍中には声を大にしては言いにく いというのが本音です。しかし、辞めると決まれ ば何も怖い物はありませんから、声を大に言い出 す人が出てきます。まさに退職というタイミング が絶好のチャンスとなるからです。特に未払い残 業代や、雇用保険の未加入などは、金銭的な利益がからむので、長期化・深刻化するケースも少な くありません。
このようなトラブルは、やはり日頃のうっぷん を溜めさせないことが重要です。金銭的な解決が 特効薬となることもありますが、中には仕返し目 的の人もいるので要注意です。従業員が何に不満 を持っているか。これを把握することが重要に なってきます。不満というのは人それぞれ違いま すし、面と向かって言いにくいものです。従業員 と経営者の間では、特にそういう傾向は強いで しょう。しかし、ここにドクターと従業員のいい 人間関係ができていれば、小さな不満なうちにこ れを知って解決したり、そもそも不満を持たせな かったりということができるようになります。そ して、問題は小さい内に解決する方が一般的には、 簡単で楽でしょう。
労働条件に関する不満を持ち出された場合、こ れが法違反だとすると会社は是正するというのが 基本路線です。しかし、たとえば「残業代が払わ れていない」と従業員が不満を口にするかどうか、 そのハードルの高さは信頼関係で決まるといえま す。「ドクターにはいろいろお世話になったから なぁ」と踏みとどまるか、「辞めるついでだ、お 礼代わりに訴えてやる」と思わせるか。これはま さに日頃の人間関係が物を言うことになるでしょう。