第1肋骨に付着する前斜角筋の前方を鎖骨下静脈が通過し、前斜角筋と中斜角筋の間を鎖骨下動脈と腕神経叢が通過する。
肩関節を外転・外旋させると鎖骨が後方に引かれ肋鎖間隙が狭くなる。前・中斜角筋間、肋鎖間隙あるいは小胸筋後部で腕神経叢・鎖骨下動が圧迫され生じる諸症状を総称し、胸郭出口症候群と呼ぶ。
■問診ポイント
1.多彩な自覚症状。上肢の冷感、重苦感、頭痛も訴えることもある。
2.日常生活、職業から上肢への負担を確認。
3.上肢を挙上する動作を繰り返す作業で出現多い。
⇒タイピストや理・美容師などに多い。窓拭き作業、つり革につかまる姿勢などで症状の誘発多い。
4.症状は一般的に寛解と憎悪を繰り返す。
5.時には心因性要素関与。
⇒職場環境、心理的加重など。
■症状
圧迫される組織、出現する症状により、神経性、静脈性、動脈性の3つに分かれる。
神経性
絞扼性神経障害の一つ。手指、腕のしびれ(尺側に多い)、冷熱感、脱力感、頚・肩甲間・前頚部・胸部などへの痛み。初期は労作時に症状出現、次第に常時自覚。
静脈性
肋鎖間隙で圧迫されると手、腕はアチノーゼ様になり重苦間を訴える。
動脈性
斜角筋間・肋鎖間で圧迫されると、上肢の阻血が起こり腕は蒼白、まもなく痛みを自覚。重症の場合は動脈血栓を考慮。
■理学所見
1.視診・体型チェック。
⇒きゃしゃで、首が長く、なで肩の女性に多く特に20歳代に発生が多い。
2.頚椎可動検査。
3.頚椎疾患性を否定するため(確認)の整形外科学テスト(頚椎圧迫検査陰性)。
4.上肢への症状は尺側(T1、2領域)に出現することがほとんどである。
5.胸郭出口圧迫テスト陽性(擬陽性に注意)。
■画像診断
X-ray: 本症に特徴的所見はないが、頚肋の判別を確認。
MRI: 本症の診断に有用となっていない。
C T: 本症に対する評価は少ない。