◇胸椎椎間板ヘルニア
原因
・胸椎は肋骨、胸骨と胸郭を形成するため頚、腰椎より可動が制限されている。
そのため、この部位でのヘルニアは比較的まれである。下位胸椎部は好発部位で、椎間板変性が明らかとなる30代以降
から発症が多い。
症状
・胸椎部でのヘルニアは腰椎椎間板ヘルニアとは異なり、脊柱管は円形で狭く脊髄を圧迫することが多い。
そのため、痙性下肢麻痺、排尿障害など重度の症状を呈す。
⇒椎体固定などの手術を要するが、脊髄麻痺を憎悪させる危険性がきわめて高い。
◇胸椎脊柱管内靭帯骨化症
原因
・日本人は他の人種と比べて後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症が多い人種である(遺伝的要因もある)。
いずれの靭帯骨化も靭帯に肥厚変形を起こし骨化へと移行する。
症状
・骨化した靭帯は徐々に厚みを増し、その結果、脊髄圧迫症状を呈す。
⇒後縦靭帯は脊髄を前部から圧迫するため、きわめて慎重な手術が要求される。
◇漏斗胸
原因
・胸郭前壁の凹変形である。片側の大胸筋、肋骨の欠如などが原因。
症状
・肺活量の低下もしばしみられる。男女比は6:1で男児に多く、乳児の胸壁は柔軟性に富んでいるため、多くは3歳前後で自然治癒する。
⇒手術は4~10歳までに胸部外科医により行われるのが望ましい。
◇鳩胸
原因
・先天性、内分泌性、代謝性、筋の発育異常などの発生原因が考えられる。
症状
・胸郭前壁が突出した変形。
⇒一般的には治療、手術の対象にはならない。
◇肋骨骨折
原因
・胸の打撲、強い圧迫で起こる。また運動時に強く引かれることによる骨折もある。
症状
・安静時の痛みは僅かであるが、大声、深呼吸、気張る動作で痛みが出現する。
バストバンドなどで動きを制限し、痛みの出る動作、入浴や飲酒も禁忌とすることで、2~3週間で痛みが減少、6~9週間は運動は制限が必要。複数の骨折でなければ4週間ほどで治癒する。
⇒交通事故や高所転落によって、多数の肋骨骨折で心肺、大血管の損傷が合併すると生命を脅かす損傷も起こりえる。
◇肺気胸
原因
・肺に穴が空く、肺のケガである。外傷によるものや、原因がなくても成長過程で空くこともある。
症状
・症状は胸に刺すような鋭い痛み、鈍い痛みが続くことも。息切れや苦しさの場合もある。軽症は運動時陽性で、重症は安静時陽性。
治療は1週間程度で自然治癒するのが主。
⇒穴が大きければ心臓や肺を圧迫するため、修
◇肋骨腫瘍
原因
・一般的にはまれである。多発性骨髄腫や乳がん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、甲状腺・肝臓・膀胱がんなどの胸椎および肋骨転移が少ない。
症状
・進行性の疼痛が出現する。
⇒X-ray像とMRI、TCシンチグラフィーが診断上有用である。X-rayで椎弓根消失が重要所見である。