腰椎分離すべり症
脊椎分離症とは、椎弓の関節突起間部の骨性連絡が断たれた状態(椎弓分離)をいい、分離すべり症とは、脊椎分離症に脊椎すべり(椎体が下位椎体に対し前方にすべる)が合併しているものをいう。
原因は日常生活やスポーツにより、下位腰椎部に負荷が集中しやすい先天的要素を持つ人に、関節突起間部に疲労骨折が生じると考えられている。
分離から分離すべりに伸展する頻度は約2割程度といわれ、若年層のスポーツ選手に好発する。
また壮年期以降では、椎間板の退行変性が関与するものが多いと考えられている。
■問診ポイント
1.転落や外力による腰部への外傷の有無を聞く。
2.成長期の激しいスポーツが分離発生に関与することが多い(小・中学生時代)。
⇒練習量や競技種目、内容を詳細に聞くことで推察が可能に。
オーバーユースや間違ったトレーニングが誘因になることも考えられる。
3.日常生活、仕事、スポーツ、体重増加などで腰椎に負担をかけていないかを確認。
4.遺伝の可能性は日本人や白人で6%程度、ある地域の人種では約60%、黒人で2%。
■症状
腰痛であることが多い。
関連痛として大腿後面まで疼痛が生じ、根性疼痛を訴えることもある。
通常は安静で軽減し運動により増強する。同一姿勢の保に発生する。
■理学所見
1.腰椎位前弯の増強。
⇒すべり症は視診、触診で棘突起の階段状の不整列が認められる。
2.腰椎伸展位やケンプ・テストで腰痛あるいは下肢痛が誘発されることが多い。
3.分離椎体の棘突起に圧痛や叩打痛を認めることが多い。
4.椎間孔部での分離・すべりや骨棘によって神経根を圧迫することもある。
5.椎間板ヘルニアとの合併いより神経根障害を発症することもまれではない。
■画像診断
X-ray:腰椎の4方向を撮影。側面像や斜位像で明確に見える。
⇒単純X-ray像で分離・すべりが確認されても必ずしもすべてが症候性であるわけではな
い。
M R I:疲労骨折による初発時期の分離診断に有用。
C T:分離部の形態を観察するのに有用。