腰部椎間板ヘルニア
髄核が繊維輪断裂部から突出、脱出により神経根を圧迫し、腰殿部や下肢への刺激症状を引き起こす椎間板退行変性過程のなかで生じる代表的な疾患である。
変性以外にも外的力学的な負荷や先天的な素因も存在する。
■問診ポイント
1.椎間板への負荷となるスポーツや日常生活動作などの誘因を確かめる。
2.初発症状は腰痛が多く次第に下肢痛を伴い、主訴が根性疼痛となるのが大半である。
⇒前屈制限が多くみられ、立位、座位の持続によって疼痛は増強する。
3.腰痛歴を有する患者が多く、そのときの程度、治療法、効果を聞く。
4.通常は安静で軽減し動作により増強する。患者の「楽」な姿勢を確認。
5.咳やくしゃみで疼痛、放散痛が生じることが多い。(デジェリン徴候)
6.殆どが片側の単一神経根障害で正中ヘルニアは稀である。(巨大ヘルニアによる馬尾障害)
■症状
腰痛と片側性の下肢痛が主体。運動によって憎悪し、安静によって軽快を示す。
症状が急性に発生する場合と慢性緩徐に起こる場合がある。
急性発症の多くは重量物挙上などが誘因となり、当初は1~2日くらい体動もままならない場合もある(急性腰痛と鑑別困)。
2、3日後より腰痛は軽快するが代わりに片側下肢痛が主体をなす。
咳などで腰殿部痛が再現され、圧迫された神経根支配領域に放散痛や知覚障害を自覚する。
慢性緩徐の起因も基本的に同様だが、著しい下肢放散痛よりも同一姿勢の保持による腰殿部、下肢の重圧痛が出現する傾向がある。
下肢筋力の低下によって、歩行時つまずきやすくなってしまうこともある。
大きい正中ヘルニアでは両側下肢に運動知覚障害を覚え、排尿障害(尿閉、残尿、尿漏れ)を訴える。
この場合は早期に外科的処置が必要である。
好発部位はL4-5間、L5-S1間で、活動性の高い男性に多い。