梨状筋症候群
坐骨神経痛の診断において、念頭に置くべき重要な疾患の一つである。
坐骨神経が通る梨状筋前部は周囲との関連からきわめて狭いため、長時間の圧迫や機械的な刺激を受けることで神経を絞扼し症状を発生させる。
場合によって症状が出没することや、肢位によって症状が変化することにより診断が容易ではない。
■問診ポイント
1.日常生活、仕事、スポーツなどによる梨状筋部への負担を推察。
⇒長時間の圧迫姿勢が誘因に。性交痛を生じることもある。
2.事故、外傷の有無を確認。
3.椎間板ヘルニアとの鑑別が重要。
⇒前屈制限が多くみられる。立位、座位の持続によって疼痛は増強する。
4.過去に経験していれば症状の比較と治療歴とその効果。
5.症状出現時の状況。
6.増強と軽減の誘発。
⇒筋・骨格系問題としての確認。
■症状
通常、坐骨神経は梨状筋の下を通過するが、約15%の人は梨状筋を貫通するように走行している。
そのため梨状筋の先天的な肥大や筋緊張、筋の弱化、伸張、外傷によって坐骨神経が絞扼され、殿・大腿部痛、下肢の広い範囲にしびれや間隔異常を発生させる。
また梨状筋部の局限的な深部痛や筋走行に沿った痛みも出現することもある。
■理学所見
1.ストレイト・レッグ・レイジング・テスト同様に、下肢を挙上させ股関節の内転や内旋をさせたときに症状が憎悪する。
⇒股関節の内旋によって梨状筋が伸張され症状が誘発される。
2.患側の股関節を外転外旋位で梨状筋を弛緩させると、症状が軽化または消失することが多い。
3.股関節外転における痛みの出現。
⇒梨状筋の緊張を強めることで誘発も。
4.坐骨神経領域に痛み、しびれ、筋力低下が生じる。
5.坐骨神経の支配を受けない大殿筋(下殿神経)の筋力評価が鑑別に有用も。
6.鑑別として整形学検査、神経学検査(知覚・筋力・反射)を評価する。
⇒特に根性疾患との鑑別必須。