症状の名称で病名ではない。頚部から肩甲骨にかけての痛みとも、疲労感とも違う、なんともいえない不快感を訴える。
人に揉んでもらったり、押してもらったりすると気持ちよく感じる。
このような症状を一般的に「肩こり」と呼ぶ。
■問診ポイント
1.一般的な問診が基本。
2.日常で多い姿勢、動作などの情報収集が大切。
⇒労働者の場合は作業内容の確認をする
3.何をすると辛くなるのか、何をしているときが辛いのかを聞き出す。
⇒特にその状態を解剖学・運動学的に分析し、どの関節、筋肉がストレスを受けているかを考える。
4.こり感増強に伴う頭痛が出現する患者には、出現部位・症状を確認すること。
5.一般的な身体症状(食欲、睡眠、社会、家族歴、精神状態)などから器質的疾患以外を推察。
6.治療歴とその効果。
⇒多数のクリニックを受診している場合も多く、何をされることで症状が軽減したのか、あるいは軽減しなかったのかを確認することで治療処置の参考になる。
■症状
一般的には頚部後面から肩甲帯や上背部にかけて筋肉の張り・こり感、重苦感が多いが、患者はさまざまな自覚症状を表現する。
症状が増悪することにより頭痛や吐き気を訴えることもある。
また、心疾患や肺疾患からの関連痛を上背部に訴える場合もあり注意を有する。
原因としては単純に考えると、頭部を支える頚部筋群の疲労によるものが主。病的には、頚椎退行変性・顎関節症・肋骨異常・高血圧症など、ほかには女性の更年期障害や、精神的ストレス、運動不足、視力低下、姿勢の悪さも誘因となり、原因は色々と考えられる。
■理学所見
1.視診:前・後・側面からのバランス、各ラインをチェック
⇒頚椎始め脊椎の生理的弯曲の状態、側弯の有無を確認。
2.可動テストによる自動、他動時の部位・症状の出現または変化を確認。
3.触診による頭頚部、上背部や肩関節周辺部の筋の緊張状態、圧痛点を確認。
⇒特に肩こりでは肩甲上角部に圧痛が認められることが多い(僧帽筋または肩甲挙筋が誘発)。
⇒慢性背部痛を訴える症例では肩甲内側縁と棘突起間に圧痛が認められることが多い。
⇒肩の疾患では上腕骨大結節部、上腕二頭筋長頭腱部、および烏口突起部に圧痛が認められる。
⇒肩内旋位の強い患者には胸筋群に圧痛も少なくない。
■患者とのコミュニケーション■
患者とのコミュニケーション上、いわゆる"スキンシップ"は非常に重要な意味を持っている。
「直接触って処置する」つまり視診、触診はそういう意味で大切で、視て、触れて初めてわかることが少なくない。
棘突起部の圧痛や叩打痛の存在、あるいは患者の何気ない動作に逃避行動の存在を確認したり、診察時、入室時の姿勢の矛盾の発見などがその例である。
したがって視診、触診は診断技術上重要であるというほかに、患者とのコミュニケーションを得る上できわめて重要な要素といえる。
■画像診断
器質的疾患の可能性があれば、X-ray、MRI、CTなどの画像診断を進める。特にX-rayでの椎骨間不安定性の確認は必要。
しかし画像診断所見から症候性か無症候性かの判断はできない。