休ませるときの賃金
前節で、休業のパターンが3つあることをお話ししました。
もう一度まとめると以下のようになります。
①法律の定めに従って休ませる
②従業員が自己判断で休む
③会社(治療院)が独自の基準で休ませる
「ノーワーク・ノーペイ」という原則がありますので、働かなければ賃金は支払う必要はありません。
しかし、労働基準法第26条に「使用者の責めによる休業は、休業手当の支払いが必要」と、定められています。
これはどういうことかというと、従業員は働くことができるのに、治療院の都合で働かなくてもいいというような場合には、その休業に対しては手当を払ってくださいということです。
上の①の場合は、法律が休めと言っています。
これは治療院の都合ではありませんから、休んだ場合は無給でかまいません。
②については、これは言ってみれば本人が「今日はつらいので、休みます」ということですから、これも治療院の都合ではありません。従って無給でかまいません。
③は、休みの基準を治療院が決めていますから、これは治療院の都合だと言えます。例えば「家族に感染者が出た場合は、2日間自宅待機とする」という基準に従って、従業員を2日間休ませた場合には、この2日間は休業手当を支払わないといけないことになります。
労働基準法第26条では「使用者の責めにより休業させる場合は、休業手当を支払いなさい」と定めています。(図表参照)
「使用者の責め」とは、簡単に言えば「会社の都合」ということです。
従業員は働く気があるのに、会社に仕事が無い、あるいは、「今日は来なくいい」などと言った場合には、休業手当を払いなさいと言っているのです。
新型インフルエンザに感染した従業員が休んだ場合に、賃金は支払わなくてもいいという話をしましたが、これは「休め」と言っているのが「法律」であり、会社の都合ではないということです。
しかし、まだ感染したかどうかわからない従業員を、会社の判断で休ませる場合は「会社都合」だから、休業手当を支払う必要があるのです。
おわりに
新型インフルエンザへの対応は、どこまでやれば適切かどうかその答えはありません。今のところは毒性も弱く、過度に行うことはないのかもしれません。
しかし、職場の安全衛生については、使用者に責任が課せられています。
考えられる対策は、できるだけ打っておくことが必要でしょう。
完