労働災害や交通事故などの外傷によって発症した頚部周辺の疼痛を主訴とする疾患の総称である。
かつては「むち打ち損傷」と呼ばれていたが、近年、日本ではその多彩な症状から外傷性頚部症候群と呼ぶことが多い。
時に他人に傷害された被害者意識などの心理的要因が症状を複雑化させる。
■問診ポイント
1.一般的な問診が基本。
2.症状の発現時期・状況・経過状態を詳細に聞く。
⇒来院時までの症状の経過は詳細に聞く。
3.神経症状や頭痛を伴っているかを確認。
4.既に治療を受けている場合は、その内容と効果を確認。
(注)既存の症状があり、事故のせいにしている可能性もある。むち打ち損傷 Grade 0~Ⅳ に分類(1995)
0=頚部愁訴なし、理学所見なし。
Ⅰ=頚部の疼痛、硬直(圧痛)のみ、理学所見なし。
Ⅱ=頚部の愁訴と骨・筋所見の存在。(可動域低下、圧
痛点など)
Ⅲ=頚部の愁訴と神経学的所見の存在。
Ⅳ=頚部の愁訴と骨折・脱臼。
■症状
1.初発症状は頚部痛、頭痛(重苦感)、頚椎運動制限であることが多い。
2.バレ リーウー症状を伴うことあり(吐き気、めまい、眼精疲労など)。
■理学所見
1.脊椎可動検査。運動制限、症状の誘発がどの方向で出現するか。
⇒他動検査において出来る限り筋性か関節性かを大別。
2.急性炎症期には頚椎生理的弯曲の減少あるいは消失。
3.神経炎や斜角筋の緊張により、一時的な上肢への痛み、知覚障害が少なくない。
⇒神経症状出現時は、頚椎圧迫検査など関連テスト必須(神経学検査も同様)。
4.胸鎖乳突筋の緊張によって、一時的な斜頚位も少なくない。
■治療のポイント
患者との信頼関係を築くこと。訴えを受け入れ、症状の説明・治療計画を明確に提示するようにする。多数のクリニックを受診している場合は、適切な治療処置を受けていない場合もある。
また被害者特有の心因性を疑われることもあり注意を有する。
■画像診断
すべてにいえるのは、外傷か、否かの判断ができない。
外傷による損傷が疑われる場合、上位頚椎の骨傷の見逃しを防ぐ。