(米)ライツウエストカイロ大学元講師 米国公認カイロドクター
学長 小倉毅D.C.
Recent Brain imaging studies
近年の脳画像研究
いくつかの研究で脳の多部位における鍼治療の影響が報告されており、それらは偽ツボ刺激ではなくReal Acupunctureのみでの変化である。
Huiらは、LI4の鍼刺激を感じ取った11人全ての被験者の側坐核、扁桃体、海馬、被蓋前部、前帯状回、尾状核、被殻、側頭葉、島にシグナル減少及び体性感覚野にシグナル増強がみられたと報告した。
また、鍼の刺激ではなく痛みとして感じた2人の被験者では、前帯状回にシグナル増強がみられた。
LI4浅部触覚刺激では予測通り体性感覚野のシグナル増強がみられ、深部構造に同様な変化はみられなかった。
筆者らは、皮質下組織の調節機能が鍼治療効果において重要な役割を果たしていると仮定した。
Wuらも類似した研究報告がなされている。LI4、ST36の刺激で視床下部、側坐核、にシグナル増加が、前帯状回後部、扁桃体、海馬にシグナル減少がみられ、偽ツボ刺激ではこれらの変化はみられなかった。
筆者らは、下行抗侵害受容機構の賦活化と疼痛関連大脳辺縁系の不活性化を結論付けた。
これらの研究は興味深いものであるが、脳における影響は鍼治療特異的なものではない可能性がある。
その理由として、プラセボクリーム治療時の患者における研究でもごく類似した結果が報告されている。
Wagerらのプラセボ麻酔薬を使用した研究では、疼痛時の視床、島、前帯状回に活動減少、前頭前野に活動増加が報告されている。その他、複数の類似した鍼治療に関する研究報告が存在する。
催眠療法に関する研究でも類似する結果が報告されている。RainvilleらのPET研究では、大脳辺縁系活動の変化なしで被験者の不快感に変化がみられたと報告されている。
従って、この研究結果も鍼治療の研究結果と同様であると考えられる。
Faymonvilleらも良く似た結果を報告している。
更に注目すべき研究結果として、プラセボ麻酔薬は脊髄及び脳に影響を及ぼしたという感作現象化を強調するような報告がある。5分間45度の皮膚温熱及びプラセボにより被験者の機械的痛覚過敏を誘発した(プラセボでは痛覚過敏部位の減少が
みられた)というものである。
まとめとして、鍼治療において疼痛伝達、疼痛受容に関連する脳の複雑な変化が存在することは明らかであるが、それらの特異性については不明瞭であることがいえる。
つづく