Brain areas involved in acupuncture treatment on functional
dyspepsia patients: A PET-CT study
< 考 察>
本研究では、健常者との比較でFD患者において右眼窩回、左尾状核尾部、帯状回に糖代謝低下がみられた。
多くの研究により大脳辺縁系は内臓知覚に関わることが報告されている。眼窩回は眼窩前頭皮質の一部であり、食物刺激に対する反応や空腹感、食欲、膨隆感、食物摂取の調節に関与することが知られている。
前帯状回は大脳辺縁系の一部であり、胃腸知覚刺激への反応、調節に関与する重要な部位である。
尾状核についても胃からの知覚に関与することが報告されている。
従って、本研究結果はこれら過去の研究結果を支持するものである。
FD患者MA後に左中心後回に代謝低下がみられた。
我々は鍼刺激による刺激の減少という仮説をたてるが、この点については更なる研究が必要と思われる。
過去の研究により知覚運動皮質(S I, S II)は胃腸知覚に関与することが報告されているが、本研究では健常者とFD患者との比較でS I, S IIには有意差はみられなかった。
しかし、VandenbergheのH2O15-PETを使用した研究では、健常者との比較においてFD患者の両側知覚運動皮質に賦活が発見されている。
この相違はスキャン過程の違いによるものと考える。
MA後小脳扁桃の顕著な不活性化は鍼刺激によるものと考えられる。最近のfMRI研究において健常者に対する電気鍼、MA刺激後、刺激に対する反応による小脳活動が報告されている。
本研究において、健常者との比較でFD患者に下側頭回に糖代謝亢進がみられた。下側頭回は視覚分析に関与するといわれている。
この結果はVandenbergheのH2O15-PET研究結果であるFD患者における左下側頭回賦活と一致するものである。
また、FGID (機能性胃腸障害)に関する研究においても視覚領域での賦活が報告されている。
従って、FD患者の視覚領域の賦活は疼痛受容との関連によるものと推察する。
FD患者MA後では、下後頭回、中後頭回、前楔小葉、右中側頭回、右中前頭回に確かな代謝亢進がみられた。
これらの部位は視覚受容に関連する部位であり、本研究では予想外の結果である。
鍼治療理論によると、胃と目のメリディアンとツボは関連しており、ST34, ST36,ST40,ST41は全て眼科疾患治療に使用するツボである。
しかし、Wuらの研究では視覚領域の賦活はツボ刺激とは関連しないと報告されている。
我々はこの結果を次のように推察する。
(1) tracer注射時の疼痛によるもの、
(2) 胃メリディアン上ツボの活動によるもの。
しかし、確かな結論を得るためにはさらに研究が必要である。
つづく