◇腸骨硬化性骨炎
原因
・原因不明
・仙腸関節のX線所見で腸骨に限局性の増殖性骨硬化が認められる。
・男性より圧倒的に女性(経産婦)に多く、出産後の周辺組織の損傷と考えることが多い。
症状
・片側または両側の仙腸関節での痛み。
・殿部、鼠径部への放散痛もしばしある。
・仙腸関節可動域の制限と運動時痛。(安静時陰性)
・脊柱起立筋の緊張。
◇パジェット病(変形性骨炎)
原因
・原因不明。
・家族発生の場合は常染色体優性遺伝を示す。
・欧米、特に白人男性に好発し日本ではまれである。
・ウィルス感染ともいわれている。
症状
・骨の肥厚、変形を越仙椎、骨盤、大腿骨、頭蓋骨などに多くみられる。
・多くは無症状であるが、関節圧がある場合は痛みが生じることもある。
・変形性のため神経絞扼症状、病的骨折、難聴が生じる。
⇒検査で血清カルシウム、血清リンがやや増加、アルカリフォスフェイトの顕著な上昇が特徴。
◇仙腸関節変形性関節症
原因
・股関節疾患による運動制限、下部腰椎の脊椎症、骨盤部の損傷後に起こりやすい。
・X線所見によって仙腸関節部に関節変性を認める。
⇒片側の股関節障害では、反対側の仙腸関節部に変性が起こりやすい。
症状
・主な症状は腰部痛であるが、無症状であることもある。
◇強直性脊椎炎
vol.54-P.6参照
◇梨状筋症候群
vol.56-P.2参照
◇仙腸関節性の疼痛
仙腸関節の発痛源は関節包ないし関節後方の靭帯領域にあると考えられている。
それは関節包と関節後方靭帯には多数の神経終末が分布するからである。関節腔内や靭帯領域に局麻剤の注入が仙腸関節性疼痛を軽減させるとの報告があるのも事実である。
仙腸関節疼痛を誘発させる代表的徒手検査として、ゲンズレン・テスト、パドリック(フェーバー)テストがある。そのテストはいずれも仙腸関節裂隙の外側縁の領域に疼痛が誘発されれば陽性である。
(注)パドリック(フェーバー)テストは通常、股関節の検査であるが、股関節を通じ、仙腸関節部にもストレスが加わる。股関節部に疼痛が出た場合は股関節疾患を考慮すべきである。
仙腸関節性疼痛は腰椎椎間板関節性疼痛と下位腰椎神経根障害、椎間板性腰痛との鑑別が最も重要である。
腰椎椎間関節性疼痛
病変椎間関節周辺の腰痛が主である。しばし関連痛
として殿部から大腿部、仙腸関節部まで達すること
があり、連続性の痛みである。
下位腰椎神経根障害
下肢痛が大腿後面に出現する。連続的に広がる疼痛が仙腸関節に及ぶこともある。有用である。
X-rayで椎弓根消失が重要所見である。
椎間板性腰痛
腰殿部に限局した疼痛領域である。
まれに仙腸関節上部に達するが、ほとんどは仙骨稜に及ぶ疼痛である。
仙腸関節性疼痛
仙腸関節部を中心とする痛みである。仙骨稜などの正中に達することが少ない他の痛みとは違って、患者はギリギリ、ズキーンとした痛みの表現をすることが多い。また患側を下にした側臥位での疼痛誘発頻度が高い。
仙腸関節性疼痛に腰部疾患が合併することも比較的に多い。
腰痛、神経根刺激症状の有無を鑑別し、疑われる腰部疾患を除外し、または優先的に治療し、残存する仙腸関節性の疼痛に対し診断、治療するのが望ましいと考える。