事例とリスク
このように、本来は全く異なる業務委託と労働者ですが、実際には明確な違いが無く使われていることがあります。
ここで、2つの事例を紹介します。
事例1 従業員と働き方が同じ会社からは業務委託と言われていたが、従業員と全く同じシフトに組み込まれ、就業時間が決められていて、その間従業員と区別無く院長から仕事を指示・命令されている。
この例は、呼び名こそ業務委託ですが、実質は労働者と言えます。
客観的に見て、労働者と同じ働き方をしている場合は、たとえ契約が業務委託であっても、実態として労働者とみなされる可能性が高くなります。
たとえば、シフトに組み込まれているが、シフトに入れるかどうか常に本人の意思が反映されていて、断ることもできるような状態ならば、労働者とは区別していることが言えいますから、誤解を生じる可能性は低くなるでしょう。
事例2 給与が支払われている会社から業務委託と言われていたが、毎月25日に給与が振り込まれ、給与明細が渡される。
これも意外と多い事例です。市販の明細用紙を使っていると、予め「給与明細」と印字されているため、そこは仕方ない部分があるのですが、支給項目に「基本給」と書いて支払われている事が多々あります。
「委託報酬」などの名称を使用するほうが無難です。
また、労働者と同じ方法で所得税が引かれていたり、なかには住民税が特別徴収されているケースもあります。
ここまでやってしまうと、会社はこの人を労働者として扱っていると思われても仕方がありません。
おわりに
労働者として雇用する場合には、使用者として拘束時間に対する賃金の支払いや社会保険などの責任が発生します。
上の2つの事例で共通することは、業務委託ではないとみなされると、「実態は労働者ではないか」とみなされるところです。
この境界線を越えると、労働基準法などの労働関係法を守らないといけない状態となり、つまりはこれが潜在的なリスクと言え
ます。
具体的に言えば、「未払いの残業代を払え」「有給休暇を取らせろ」ということや、契約を打ち切れば「不当解雇だ」「失業手当がもらえるはずだ」というトラブルになる可能性があります。
労働者であるかどうかは、名称ではなく実態で判断されるというところに注意していただき、実態に照らしてリスクがあるのかどうか、認識しておくことが、とても重要です。
完