背 景
頸部痛は、一般的に、また筋骨格系疾患臨床において、腰痛に次いで多くみられる症状であり、その慢性化への移行率は高く、日常のQOL低下に起因するものである。
頚部痛患者への対処及び病理的要因の解明は困難である。
Neck Disability Index (NDI)は1991年に掲載され、頚部痛、特にむち打ち関連症状 (Whiplash AssociatedDisorder: WAD) 患者の重症度の分類と予後評価に有用であるといわれている。
しかし、NDIスコアの身体的、組織的相関関係は注視されていない。
組織的相関を評価するための方法として、SPECTや他の神経画像による脳活動評価などがある。
Otteらの最初の脳画像研究ではむち打ち症患者の頭頂-後頭皮質潅流低下が報告され、その他いくつかのWAD患者及びnon-WAD患者における脳画像研究が報告されている。
WAD患者を対象とした研究ではいずれも潅流低下が報告されているが、non-WAD患者における研究では潅流低下を示したもの、示さなかったもの両方の報告がなされている。
また、LinnmanらのPET研究(WAD)ではNDIスコアと画像解析結果との間に強い相関が報告されている。
我々は、NDIスコアによる患者の分類と大脳皮質潅流異常との関連および頚椎・上部胸椎関節機能不全とSPECTあるいは/及びNDIスコアとの関連を仮説に本研究を実施した。
方 法
Study Design
・横断的(cross-sectional)相関デザインを使用した。
・Russian Governmental Medical University 倫理委員会承認の下実施された。
・実験前患者の承諾を得て実施した。
Subjects
・Moscow Manual Therapy Centerに来院した慢性 頚部痛・上背部痛患者45人(平均40±10.9歳;男 16人、女29人)(2006年2月~2010年2月)
・除外:むち打ち症(current)、動脈硬化症、高血圧症、偏頭痛、糖尿病、鬱病、頭部外傷、発作既往歴、脊椎手術歴、喫煙、薬剤摂取、腰痛
・問診により性別、年齢を記録
Measures
1.NDI:10項目、各項目スコア;0̃5、トータルスコア;50
2.一人の検者による頚椎、上部胸椎部(肋椎関節を含む)触診→“segmental dysfunction”部位検出
3.触診時の圧痛レベル(上記検出部位)をVisual Analogue Scale (VAS:0~10)を用いて記録
2、3を5分間のインターバルで2回行い平均値を記録
4.SPECT撮像
検査:上記検査の1~3日後に実施
15分間休息後、Technetium-99m
hexamethylpropyleneamineoxime(HMPAO)
7.5MBq/kgを投与
20分~40分後撮像
使用機材:double-head gamma camera system
Philips Forte
画像データ:128×128 pixel matrix,
64 projections 30~ 40 sec./view,
50,000~70,000 impulses/view
Technology Jet Streamによりディテクターを患者の頭部により近付けることが可能になった。
5.画像解析
生データ→ Butterworth filter →画像再構成
(Hanning filters, Chang’s method: 8mm widths
3軸方向の補正)
6.画像比較
2人の放射線科医師により評価-visual color scale
(VCS)による前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の比較
1ステップ5% (0̃100%) (Fig.1左端20色下:青→
上:茶、赤、白:100%) - 10%以上の差異を記録
(normal;Fig1との比較)
Region of interest (ROI)による解析
Data Analysis
・全脳、局所脳のSPECTスコアと3グループsegmen
tal dysfunctionスコアの分散分析(P<.05)
・Student t test (pair-wise)の使用
・segmental dysfunctionスコア、VASスコア、NDI
と総SPECTスコア(局所潅流低下率)との間、および年齢、罹患期間における相関解析-Pearsonの相関係数を用いた一側変量(univariate)相関解析(P<.05)
・多変量解析(P<.05)の実施
つづく