JCDC札幌校 学院長 川人誠司B.S.C.
【強直性脊椎炎】
マリーストリンペル病とも呼ばれる多発既関節炎の一つで、
慢性関節リウマチ類似の炎症性疾患であり、
脊椎と仙腸関節が侵される進行性の骨強直を特徴とする。
家族内発生が高率に認められ、90%は男性である。
10代後半から35歳までに好発するが病因は不明である。
■問診ポイント・症状・理学所見
仙腸関節より発生多く初発症状は腰痛を訴えることが多い。
徐々に腰椎、胸椎、頚椎へと移行する。
脊椎関節、周辺組織を侵し最終的には骨化させ、骨性強直に至る。
胸椎部まで進行すると腰背部の可動制限を、また骨化により肋椎関節を固着させ胸郭拡張制限の原因となり、呼吸時の胸部痛を引き起こすこともある。
特に四肢の関節(肩・股関節等)を侵す場合もある。
検査所見では本症例において、HLA-B27陽性反応例がきわめて高率を示す。
また視診では、顕著な円背姿勢を認める。
■画像診断
X-ray : 仙腸関節骨癒合と椎間関節癒合が特徴である。
⇒角ばった椎体と線維輪の骨化が認められている。
■鑑別診断
強直性脊椎骨増殖症(フォレスティール病またはDISH)
軽度の胸腰痛を訴えることがある。 50歳以上の男性に多く発症する。
椎体前面に特有な骨の異常増殖を示す。
が、仙腸関節、椎間板腔に変化は認めず、靭帯や腱の付着部に骨化を伴うことが多い。
脊椎以外での骨増殖は股関節に認めることも少なくない。
日本では後縦靭帯骨症を併発する例が多い。
後縦靭帯や黄色靭帯が骨化を起こした場合は、
脊柱管の狭窄を起こし脊髄症状を呈することもある。
一般的な発症部位はT7~T12の中・下位胸椎粒である。
時に大規模での骨増殖により、頚椎部が侵されると嘸下が困難になる。
軽度の円背姿勢を認めることもある。
因果関係は不明だが20%の患者に糖尿病との併発がみられる。
若年性後弯症(ショイエルマン病)
10歳代前半の思春期に胸椎部に発生する。
胸椎の椎体楔状化による円背をもたらす。
病勢は骨格の成長終了とともに終わり、成長が完了すると進行は停止する。
胸椎円背の代償に腰椎の前弯を促進させる。背部の疲労感を訴えることも。
X-Ray所見で椎体の楔状化、および多発性のシューモール結節を認める。
後弯が重度の場合脊髄圧迫症状を引き起こすため、手術が必要となることもある。
次回に続く